隣の庭は青く見えるーこういう研究生活をしてみたかった時期があったことを思い出した。
傍からみたら楽そう・楽しそうに見える昆虫の世話。だけど、実際にやってみると印象が随分変わる。ふと、以前、研究室選びでなやんだことを 思い出した。
前の記事で、天敵昆虫のバイトに関する記事を書いた。仕事内容は、昆虫の飼育ケースのエサや下地を変えるだけ、、いわば単純作業だが、そういえば、この作業は、以前じぶんが研究室でやりたいと思っていたことだったことを思いだし、もう一記事。
研究室分属のとき、私は2つの分野で大いに悩んだ。行きたいうちの一つは生態系などについての研究室。材料は虫で、動物行動学や進化に関する研究ができる。
もう一つは獣害について研究ができる研究室。といっても獣害が専門の先生ではなくて、主な対象は森林経営などだが、幅広いテーマを受け入れてくれる先生なので、森林経営にも影響があるとして、研究テーマにすることができるのだ。過去には、この研究室で獣害をテーマにした学生もいた。
さて、この2つを比べたときに、いくつかポイントとなる点が存在する。
その中でも大事なのは、内容の面白さについてだ。
内容とは、テーマ自体の興味と、実際に行うプロセスの2つだ。
テーマとしては、生態系、獣害、どちらも魅力的だ。ここは引き分けとする。
研究のプロセス、つまり実際に行う作業等だが、これは獣害に軍配が上がった。
生態系の研究室など日常の主な作業は、昆虫の世話となる。昆虫の世話といって、カブトムシを飼っているときのように、霧吹きをしたり、ゼリーを変えたりするものを想像しては行けない。まず研究の対象となる虫はとても小さい。1cmもにないことが普通で、中にはダニのように、顕微鏡を使わないと観察できないものもいる。(うちの学校はハダニの研究が盛んだ)
また、甲虫やチョウ目など、かっこいい・きれいな虫のみを飼育するわけではない(こういうと語弊がありそうだが、一般的な意味で)
ハエやカメムシの仲間が飼育対象となってくる。ずっと世話をしていたらかわいく見えてくるが、普通の人からしたら、害虫の部類に入る虫たちである。
それでもこの作業は大切なものだと考えていた。なぜなら、こういった虫とひたすら向き合う作業を続ける中で、昆虫の生態系を学ぶのに不可欠な飼育のノウハウが見についたり、新しい発見へとつながるからだ。
だからこんな作業ー昆虫の行動をゆっくりみながら、世話をする研究生活もいいなあ、と考えていたのだ。
結果的には獣害の分野に進み、研究室で虫の世話に明け暮れる生活を送ることもなかった。自分の中では、周りの同級生たちが世話のため毎日研究室に通うのをみて、少し羨ましい気持ちもあったのだ。
しかし、今回バイトで昆虫の世話をしてみて分かった。
「あ、これ、大変なやつだ」
つまり、単純作業で、終わるまでに時間がかかるのだ。これはほんとに地道な作業だ。。しかも相手は生き物だ。毎日世話をしなくてはならない。正月とか、GWだとか、台風が来ているとは、今日はちょっと家でゴロゴロしていたい、とか関係ない。日課として毎日やらなくてはならないのだ。
「隣の庭は青く見える」
ここに来て、昆虫を題材に、飼育して研究するということの大変さを知ったのだ。
人は自分で実際に体験して見なくてはわからないことが多い。傍目には楽そう・楽しそうに見えても、それをやっている本人たちは違う気持ちである可能性は大いにある。
研究に近道はあらずー。自分の選択した道を進んでいくしかない。楽な研究などないのだから。